イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
翌日。
今日はいつもどおり出勤。
指はすっかりよくなっていた。
けれども、とってもゆううつだ。
晴友くんに、どんな顔をして会えばいいんだろう…。
「おつかれー日菜ちゃん!」
ホールに入る早々、美南ちゃんがにこやかに迎えてくれた。
「昨日はごめんね、急用を思い出しちゃってさー。
で、晴友とはどうだった?」
どう、と聞かれてもな…。
わたしは笑顔をつくった。
「実はね、昨日はすごい人に会っちゃったの。
愛本カンナさん。
すごいよね…!晴友くんってあのカンナさんと幼馴染だったんだね」
「カンナに??」
予想していなかった答えだったのか、美南ちゃんは目を丸めた。
反応をみると、美南ちゃんも知り合いなのかな。
「うん。テレビで観るよりずっとキレイな人だったよ。
すごいね、あんな有名人なのに、みんな知ってるんだね」
「ここで一緒に働いていたからね。
偶然お店に来ていたスカウトマンに目をつけられてそのままデビュー。今じゃ別世界の人」
美南ちゃん最初の元気はなくなっていた。
なんだか気まずそう…気のせいかな…。
晴友くんのカンナさんへの気持ちを、知っていたから、かな…。
ある日突然、芸能界入りか…。
晴友くんどんな気持ちだったのかな。
好きな子が突然遠くに行ってしまうなんて…。