イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
わたしを見つめながらつぶやく晴友くんだったけれど、少し間を置くと、ぽつりと言った。
「おまえ、もうここに来るのはやめた方がいいんじゃ」
「だ、大丈夫だよ!」
続きをさえぎるように、わたしは明るい声で言った。
「大丈夫、お兄ちゃんのことはわたしの問題だもの。自分でなんとかするね。
きっと、わたしがもっとしっかりすれば、お兄ちゃんだってわかってくれると思うから」
と言っても、全然自信が無かった。
カンナさんのダメージが大きい今のわたしに、お兄ちゃんを説き伏せるられるような気力は湧いてこなかった。
お兄ちゃんといい、カンナさんといい…
想定しなかった大きな障害に、わたしの小さな恋は押し潰されてしまいそうだった…。
カランっ!!
その時、お店の扉が勢いよく開いた。
まだ開店時間じゃないんだけれどな…とわたしは扉へ駆け寄る。
自信にあふれた様子で入ってきた女のお客さまは、ふふ、と形のいい口元をゆがめると、サングラスを外した。
「…カンナ!?」
ウワサをすればなんとやら…。
現れたのは、あの愛本カンナさんだった!
「ひさしぶりーっみんなっ!今日はお客さまとして来てみましたーっ!
って、きゃー!晴友―ぉ!!」
ドンっ!とわたしを押し退けて、カンナさんは晴友くんに抱きついた。