イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「カンナ!?なんでお前がここに?」
「息抜きにーぃ。
昨日会えたのがうれしくてぇー。もうこれは神さまが『行きなさい』って行ってるのかなと思って来ちゃった」
と、晴友くんにベタベタ抱きつくカンナさん。
グラビア表紙で見かける大きな胸を押し当てているのが目に入って、思わず視線を外した。
「お客で…って、まだ開店時間になっていないでしょ」
美南ちゃんが少し尖った口調で言った。
「だってーぇ、営業時間に来たら、他のお客さんに気づかれて迷惑になっちゃでしょー?
ひさしぶりにみんなにも会いたかったし、つい来ちゃったの!」
ズキ…と胸は鈍く痛む。
と言うけれど、カンナさん…一番の目的は晴友くんに会うことなんじゃないかな…。
「っそ。
あいにく、今日は拓弥と暁兄は休みだけど、食ったら帰れよ。
なに食いてぇの?今下準備で忙しいから凝ったのは作ってやれねぇけど」
晴友くんは照れているのか、冷静だった。
すっとカンナさんの身体を押しのけると、カウンターへ行く。
「おまえ、ココア好きだったよな。生クリームたっぷり入れたヤツ。作ってやるから座ってろよ」
「んー…。エスプレッソで大丈夫」
「…え?
…ああ、そうだったな。はいはい」
くるり、と踵を返すカンナさん。
ぱちり
わたしと目が合った…。
えっと、お席にご案内しなきゃ…。
「ご、ご案内しますね…」
「わー美南ーっ!」
小さかったけど、わたしの声は聞こえたはず。
けど、カンナさんは見事にわたしを無視すると、後ろにいた美南ちゃんへ駆け寄った。