イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「その制服新しくなったよねー?ちょーかわいいんだけどー!!美南にすごく似合ってる!さっすが祥子ちゃん、センスいい!」
「あ、ありがと。
…カンナもだいぶ変わったね。もうすっかり芸能人って感じで」
「そう?もう事務所があれしろこうしろってうるさくてさー」
とカンナさんは好きな席にさっさと座ってしまう。
晴友くんがエスプレッソラテを持って来た。
わ…ラテアートもしてある。手の込んだデザインは、わたしが知らないメニューには出していないもの…。
「わー昔よく作ってくれてたやつだよね!ありがとっ!晴友」
ズキ、とかすかに胸が痛んだ。
わたしが知らない、幼馴染のふたりにしか知り得ないことを見せられて…。
「ねぇね、まだイベントとかやってるんでしょ?ベイエリアサマーフェスタ近いけど、今年も開店記念やるの?」
「ああ」
「また衣装揃えるんでしょ?」
キラキラした目で訊かれて、美南ちゃんがうなづいた。
「いいなぁ!私もまざりたーい!ねぇね、イベントの日、私も手伝わせてもらえないかなー?」
「え?」と晴友くんと美南ちゃんは顔を見合わせた。
「おまえ、仕事はどうするんだよ。一日だって休み取るの難しいだろ」
「無理矢理もぎとるー。ね、いいでしょー?」
「…はぁ?」
「もちろん、バレないように変装して、店に迷惑かけないようにするからぁ」
「だめよ、環奈」
そこでピシャリと言ったのは、祥子さんだった。
様子に気づいてキッチンから出てきたみたいだ。