イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「みんなおまえの成功をうれしく思ってるよ。俺もおまえの活躍を毎日たのしみに見ている。…ま、本音を言えばちょっと焦っているけどな」


「晴友…!」


「早く帰れ。おまえの居場所はもうここじゃないだろ」




そうして出て行った晴友くんに、どんな思いがあったのか…わたしには容易に想像できなかった。


カンナさんは大きな目に涙を溜めて、みんなをにらみまわした。


そして、


最後に思いっきりわたしにキツいまなざしを向けると、なにも言わずにお店を駆け出て行ってしまった。




「やれやれ、困ったものね…」




溜息まじりに祥子さんが続けた。




「あの子、芸能界に入ってすっかり変わっちゃったわね。前はあんな風にわがままじゃなかったのに」




そうですね、とうなづいて美南ちゃんが続けた。




「前はちょっと我か強いところはあったけれど、素直で明るくていいコだったのに…。やっぱりつらいところなのかな、芸能界って」




取り残されたように黙っていたわたしを気遣って、祥子さんが説明してくれた。
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