イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「びっくりしたでしょ?
環奈はね、芸能界に入る前は、このお店でみんなと一緒に働いてくれてたの。
ある日スカウトされて…あの子自身も華やかな世界で活躍することが夢だったから大喜びで承諾したのよね。
1人減った店は忙しかったけれど、もしかしたらすぐに戻ってくるかも、なんてみんなどこかで思っていて、新しい子を受け入れる気も起きなくて…。
でもあの子をテレビでしょっちゅう見かけるようになって、やっとみんな『環奈はちがう存在になった』って自覚して。
それで新しい子を受け入れることにしたの。
それが、日菜ちゃんよ」
わたし…。
そうか…だからわたしのことを無視したんだ…。
わたしがカンナさんの居場所を奪った存在だから…。
にらんできた時のカンナさんの顔が思い浮かんだ。
怖かったけど、どこか悲しそうだった…。
祥子さんと美南ちゃんは、まだカンナさんのことを話ししていた。
カンナさんとみんなには、わたしが知らない思い出と絆があるんだね…。
そして晴友くんには、きっとみんな以上の想いがある…。
なんだか、わたしひとりがのけ者になって気分だった。
ほんとうは…
お店を出るのは、カンナさんじゃなくてわたしの方が良かったんじゃ…。