イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「ちょ…!大きな声出さないでっ!」




「どうして…?」と訊こうとしたところで、




「ほら、早く配膳してきなよ!
ほんとあんたって見ててグズよね!」




追い立てられるまま配膳しに行くと、その間にもカンナさんはオーダーを取ってきてしまう。


それだけでなく、イライラしているお客さまもそつなく応対するし、配膳までしてしまう。




最終的に。

わたしは暁さんとカンナさんの間で商品を運ぶだけの係りになってしまっていた。



わたしが受け持っているスペースは暁さんの死角になっているし、晴友くんたちも忙しくてカンナさんの存在に気づけていない。

スムーズにお客さまを回すのが第一だから、くやしいけど、わたしも何も抵抗ができなかった。


それをいいことに、カンナさんはすっかりわたしの仕事を奪ってしまった。

テキパキ仕事をこなすカンナさんの顔は、勝ち誇るようにわたしを見下していた。

まるで『さっさと私の居場所から出て行って』と主張するかのごとく…。
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