イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で



キスされたとき、一瞬何が起こったのかわからず、俺はカンナの腰に手を当てた。


首に腕が回り、甘たるい香水が鼻を掠めたところで、俺はとっさにカンナを突き離した。




「やめろ…っ!」


「…だってっ…!わたしずっと後悔していたの!晴友を傷つけたって…!晴友がどんな思いで作ってくれたケーキか考えもしないで拒絶して…」


「…あれは…」





たしかに苦い思い出だった。

環奈を励ますつもりで作ったケーキが、逆に苦しませるものになってしまったのだから。




「あれはむしろ俺の方が無神経だったんだ。それを、俺が無神経に逆撫でするようなことをしたから。
ああいうことを言ったのは、それだけおまえが必死で頑張っていた、ってことだろ?
後悔なんて、する必要ない」


「するよ!!
…そういう…問題じゃないんだよ…。私の後悔は…そういうことじゃない…」


「…環奈…」




涙をこぼした環奈に目を見張った。




「だって晴友のこと大好きだったのに…誰よりも大切だったのに…。
それは今も変わらない…。私は、晴友のことがずっと、ずっと好き…」
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