イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「あんましショックだから、この画像、拡散しちゃおっかなー?
事務所のエラい人はびっくりするだろーね。無断で外出した挙句にスキャンダルとられて。まだデビューして間もないタレントがそんなめんどくさいことやらかしたら、たまらないだろーね」
「…やめてっ!消しなさいよ!」
奪い取ろうとするカンナさんだけれど、子どもをからかうようにあしらわれる。
「そんなに返してほしいならさ、俺たちにきちんとお願いしてみせてよ」
「な…」
「その誠意次第では、見逃してあげなくもないよ」
そう言う顔には、下品な笑みが広がっている。
そんな言葉、嘘に決まっている。
こんなの脅しだ。卑怯だ。
ファンのすることじゃ…ううん、人がすることじゃないよ。
こんな人のために、カンナさんが努力して築いてきたものが壊されるなんて…。
「痛っ!!」
わたしを掴む男がカンナさんに集中している隙をついて、わたしはその腕に思いっきり噛みついた。
一瞬力がゆるんだすきに抜け出して、カンナさんを捕える男のスマホに手を伸ばす。
「痛って…!マジで見かけによらずだな、このクソガキ…!!」
「きゃっ!!」
頭に痛みが走った。
思いっきり髪を引っ張られ、動きを封じられてしまった。