イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「…ど、どうして…」




わたしは思わずつぶやいてしまった。




「…どうしてわたしが、助けられるの…」


「…は?」




晴友くんは器用に左右の眉をゆがめた。

けど呆れたように息をつくと、


ぎゅう


と、わたしを抱き締めた。




「は、るとも…くん…?」


「るせぇ…。今は、黙ってろ」




驚きと息苦しさで言葉がうまく出てこない。


わたしはたしかに抱き締められていた。

疑うべくは無い。だってこの前とはちがって、晴友くんの力強い腕は、熱い体温は、

たしかにわたしを強く包んで離さなさないから。




「ったく…だからおまえから目離すの、嫌なんだよ…」




そうして、腕の力がもっと強くなる。

きつくきつく、わたしを独り占めするかのように。



苦しい。

息ができない…。



あえぐように動かした頭に、晴友くんがキスをするようにそっと唇を付けた。




「…理由は…あとで教えてやる。
教えたら、ちゃんと応えろよ…」




わたしだけにささやかれた声は、思いつめたようにかすれていた。

しびれるように胸が高鳴ったわたしの視界に、カンナさんがうつった。


カンナさんは微笑んでいた。


ちょっとさびしげに、でも穏やかな顔で、わたしと晴友くんを見守っていてくれていた…。







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