イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「そのことを理解した上での日菜自身の決断だ。急で申し訳ないが、いままでお世話になった」




お兄ちゃんの言葉は嘘じゃない。

やめる決意を告げたのは、たしかにわたしだった。


けれども、

うちの経営を担わなければならないのは本当だけれど…それは建前で、本当はそんな大した理由じゃない。


これ以上、晴友くんのそばにいるのがつらかったから…。




「ふざけんな!!」




そんなわたしを叱咤するように、晴友くんが言い放った。




「日菜の意志!?
そんなの、あんたが無理矢理そう押し切らせただけだろ!」


「なに?」




お兄ちゃんの冷やかな顔が変わった。

あの初めて会った時以来、お兄ちゃんは晴友くんをすっかり嫌っている…。




「日菜が大事なのは本当だろうけど、でも、こいつはあんたのお人形じゃねぇんだぞ。
あんたはその気持ち悪ぃ高いプライドを、日菜にも押し付けたいだけだ」




晴友くんのストレートな言葉に、お兄ちゃんは逆上しそうになったけれど…




「だとしても、どうだと言うんだ?」




また冷やかに言い放った。




「こんな素人が商品を出すような三流以下の店で働くことが、日菜の将来の足しになると、本当におまえは思っているのか?」


「……」


「おまえもケーキも素人受けにはいいようだが…フッ、俺から見れば、ただの家庭料理程度だ。
そんなものしか作れないおまえと日菜では、不釣合いだ」




さすがの晴友くんも、言葉を失ってしまう…。
< 244 / 257 >

この作品をシェア

pagetop