イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「そのことを理解した上での日菜自身の決断だ。急で申し訳ないが、いままでお世話になった」
お兄ちゃんの言葉は嘘じゃない。
やめる決意を告げたのは、たしかにわたしだった。
けれども、
うちの経営を担わなければならないのは本当だけれど…それは建前で、本当はそんな大した理由じゃない。
これ以上、晴友くんのそばにいるのがつらかったから…。
「ふざけんな!!」
そんなわたしを叱咤するように、晴友くんが言い放った。
「日菜の意志!?
そんなの、あんたが無理矢理そう押し切らせただけだろ!」
「なに?」
お兄ちゃんの冷やかな顔が変わった。
あの初めて会った時以来、お兄ちゃんは晴友くんをすっかり嫌っている…。
「日菜が大事なのは本当だろうけど、でも、こいつはあんたのお人形じゃねぇんだぞ。
あんたはその気持ち悪ぃ高いプライドを、日菜にも押し付けたいだけだ」
晴友くんのストレートな言葉に、お兄ちゃんは逆上しそうになったけれど…
「だとしても、どうだと言うんだ?」
また冷やかに言い放った。
「こんな素人が商品を出すような三流以下の店で働くことが、日菜の将来の足しになると、本当におまえは思っているのか?」
「……」
「おまえもケーキも素人受けにはいいようだが…フッ、俺から見れば、ただの家庭料理程度だ。
そんなものしか作れないおまえと日菜では、不釣合いだ」
さすがの晴友くんも、言葉を失ってしまう…。