イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「どうして…?」
「…知らねぇよ。いつの間にか好きだったんだ」
「どうして…」
「だからわかんねぇよ…。こんなめんどくさいヤツ、おまえは嫌かもし」
「どうしてわたしが言おうとしたことを言うの…?イジワルっ…!」
「……!」
「…わたしだって、ずっとずっと前から…このお店にアルバイトに入る前からずーっと、晴友くんのことが…」
晴友くんがわたしの身体をはなした。
「ほんとか…?
じゃあ、俺たち、知らない間に、ずっと前から…」
嘘みたい…。
夢じゃない、よね…。
と、指を伸ばしたら、晴友くんが先にわたしの頬をつねった。
痛い…。
涙が、また落ちた。
けれどもそれは…しあわせなうれし涙…。
「晴友くん…」
とめどなく流れて頬を濡らす涙をぬぐった。
何度も何度も、頭の中でイメージした光景。
晴友くんに想いを伝えるその瞬間。
こんなひどい顔で告白するなんて、思ってもみなかったけど。
ずっと胸に大切にしまっていた想いを、今、改めて、言葉に乗せる…。
「ずっと前から好きでした。
わたしとお付き合いしてください」
きれいで、ちょっと怖い顔がやわらかく崩れた。
今まで見たことがないような、やさしくて、でもちょっと泣きそうな微笑を浮かべて、晴友くんがゆっくりと返答した。
「すげぇうれしい。
俺も、ずうっと、そう言いたかった…」
それは、わたしが憧れ描いていたどの光景よりも素敵な応えだった。
片想いの人と両想いになれた、世界で一番幸せな瞬間だった。
「おーまーえーらぁあああ…!!」
感激にひたる余裕をあたえず、怖い声が飛んできた。