イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「しっかし、ここまでのシスコンは初めてだわ」
完璧に呆れかえりながら、祥子さんがわたしと晴友くんの後ろにぴったりとついて歩くお兄ちゃんを横目で見た。
『ご褒美』のお小遣いをもらうと、いつの間にか拓弥くんと美南ちゃんはいなくなっていて、わたしと晴友くん、祥子さん暁さん、そしてお兄ちゃんで歩いていた。
「ここまでくれば病気ね。
ま、日菜ちゃんの可愛さを考えると無理もない話だけれど。
おかげで、こちらも日菜ちゃんが来てからというもの収益の伸び率がうなぎ上りで…ぐふふふ」
そんな祥子さんを、今度はお兄ちゃんが横目で見る。
「こう姉がガメツイと、弟が図々しいのもうなづけるな。
日菜、おまえが経営を担っても、こういう輩にはなっちゃだめだぞ」
「う、あ、はぁ…」
晴友くんはさっきから黙って聞いていた。
けど、ちょっと眉間のしわの深さが増しているような…。
「だいいち日菜の相手はな、俺が認めた優秀なパティシエじゃないとだめなんだ。じゃないと、極上スイーツを好きなだけ食べさせてあげられないだろう?」
「……じゃあ、俺じゃだめすか」
黙っていた晴友くんが、ぽつりと訊いた。
「はは、笑えない冗談だな」
「……ろくに試しもしないで否定するの、やめてもらえます?」
「ほう、ずいぶんな物言いだなぁ…」
うう…ふたりの間に炎が見えるのはわたしだけかな…。
「日菜ちゃん、日菜ちゃん」
そこへ暁さんが耳打ちしてくる。
さっきから祥子さんとお兄ちゃんがずっと言い合いしているのを、暁さんらしくなく不機嫌そうに見守っていたけれど…