イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「このあと花火が打ち上がるの知ってるよね?」
「あ、はい」
ベイエリアサマーフェスタの締めは、海上から打ち上げられる数万発の花火だ。
「お兄さんはきっと知らないと思うからさ、花火にびっくりしているうちに、まいちゃおっか」
「え?」
「俺は祥子さんを連れて行くから、日菜ちゃんは晴友と、ね」
「え…」
「お兄さんかわいそうだけれど、仕方がないよね。晴友くんとふたりっきりになりたいでしょ?」
「え…!そ、そんな…!」
「ほら、そろそろ時間だ」
そこで、どん、と夜空が鳴った。
お兄ちゃんが夜空を見上げたすきに、暁さんがびっくりしている祥子さんを連れて人混みにまぎれていく。
こ、こうなれば、わたしも早く行かなきゃ…と思ったら、
「…きゃっ…!」
晴友くんも同じこと考えてたみたい。
「行くぞ、日菜」
と、ちょっと悪い笑みを浮かべて、わたしの手を強く引いて人ごみの中へ走った。
「日菜!?どこへ…!待ちなさいっ!」
ごめんね、お兄ちゃん!!
でも…
やった…!
これからが本当のデートだっ。
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