イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
しばらく走ったところで、わたしと晴友くんは立ち止まった。




「ここまでくればいいかなっ」


「ああ。って、大丈夫だったか?」


「大丈夫、大丈夫!」




とは言ってみせたものの、帰った後のくどくど説教がゆううつだな…。




夜空には、いよいよ花火が本格的に盛大になっていく。

海上に開いた花が海面にも映って、華やかな輝きが海岸全体に降りそそぐ。



すごく、綺麗…。



隣を見ると、同じように見上げている晴友くんのきれいな横顔がある。

その手は、かたくわたしの手を握ってくれている…。



これからずっと、握っていられるんだな…。



そう思うとうれしくて、花火が華やかに開くとともに、ゆううつも吹き飛んでいく気がした。






「もうすこしよく見えるところに行こうか」


「…うん」




手をつないだまま、ところせましと並んでいる出店の合間をふたりで行く。
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