イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


わ…




思いがけない、ファーストキス。


時が止まったかと思った。

全身の意識が、晴友くんのやわらかい唇に集中していた…。




「…やっぱ甘いな、おまえの唇」




花火の音も人の賑わいも全部シャットアウトされた中で、晴友くんのかすれた声だけが聞こえた。


そして、もう一度、重ねられる。


今度は少し長く、ついばむように、味わうように…。




「ん…っ」




胸がとろけそうに甘く高鳴った。

きっと、どんなスイーツを食べたって、こんな甘さは味わえない、ってくらい。




「…覚悟しろよ。
俺の独占欲は、兄貴以上に半端ねぇぞ」




低く甘くささやかれた言葉に、わたしはうつむきながら深くうなづいた。




「…平気だよ…。だって、ずっとずっと、こんな日を望んでいたんだもん…」


「それを言うなら、俺だって同じだ」




身体が火照る…。


今までの晴友くんの言葉や行動が、溢れるようによみがえってくる。




「…じゃあ一緒に働いている時に、イジワルなことをしてきたのはどうしてなの…?」


「そ、それは…」




顔を赤くさせて、口ごもる晴友くん。




「…晴友くんは、い…いつからわたしのことが…好き…だったの…??」


「い、いいじゃねぇか、そんなこと」


「よくないよ…。だって、こんなにしあわせなら、もっと前から『好き』って打ち明けていたかったから…」




ぽつり、と言うと、晴友くんは一瞬口ごもって、そして、参ったように額に手を当てた。
< 256 / 257 >

この作品をシェア

pagetop