イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
わ…
思いがけない、ファーストキス。
時が止まったかと思った。
全身の意識が、晴友くんのやわらかい唇に集中していた…。
「…やっぱ甘いな、おまえの唇」
花火の音も人の賑わいも全部シャットアウトされた中で、晴友くんのかすれた声だけが聞こえた。
そして、もう一度、重ねられる。
今度は少し長く、ついばむように、味わうように…。
「ん…っ」
胸がとろけそうに甘く高鳴った。
きっと、どんなスイーツを食べたって、こんな甘さは味わえない、ってくらい。
「…覚悟しろよ。
俺の独占欲は、兄貴以上に半端ねぇぞ」
低く甘くささやかれた言葉に、わたしはうつむきながら深くうなづいた。
「…平気だよ…。だって、ずっとずっと、こんな日を望んでいたんだもん…」
「それを言うなら、俺だって同じだ」
身体が火照る…。
今までの晴友くんの言葉や行動が、溢れるようによみがえってくる。
「…じゃあ一緒に働いている時に、イジワルなことをしてきたのはどうしてなの…?」
「そ、それは…」
顔を赤くさせて、口ごもる晴友くん。
「…晴友くんは、い…いつからわたしのことが…好き…だったの…??」
「い、いいじゃねぇか、そんなこと」
「よくないよ…。だって、こんなにしあわせなら、もっと前から『好き』って打ち明けていたかったから…」
ぽつり、と言うと、晴友くんは一瞬口ごもって、そして、参ったように額に手を当てた。