イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「だからちがうだろ。何回言ったら覚えるんだよっ」
本日2回目。
榊くんの雷。
うちのメニューにはそれぞれ決まったアピールセリフがあって…(そう、アイドルが自己紹介する時みたいなお決まりのセリフ)、お客さまにメニューのことを訊かれた時ににこやかに笑って言ったりする。
それをわたしはいまだに言えずにいた。
「っとバカだよなおまえ。頭ザルなのかよ。それとも、サル並みの記憶力しかないとか?」
と、わたしの頭を指で小突く。
榊くんにさわられるのはドキドキするけど…
「サルなの?ザル頭なのー?」
なんて乱暴につつかれては、トキメキなんか皆無。情けなくて胸が苦しくなる。
「ごめんなさい…。ちゃんと覚えていんだけど…お客さまを前にしたら混乱しちゃって…ごめんなさい…」
「ありえね。なんでそんな性格して接客業やろうと思ったんだか」
…あなたのことが、好きだからだよっ。