イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
そもそも、わたしは人前に立ったり話したりするのが苦手だ。
ましてや年上の人で、お金を払ってくれるお客さまって立場の人となら『ちゃんとやらなきゃ』ってなおさら緊張しちゃって、一生懸命覚えたことも真っ白になってしまう。
はぁ…わたしって本当にどんくさくてダメダメだ…。
憧れの榊くんには怒られてばかりだし…。
こんなんじゃ、告白どころか同じ店員仲間って認めてももらえないよ…。
つん…とまた鼻が痛くなる。
わたし…榊くんのこと、あきらめた方がいいのかな…。
「日菜ちゃん」
「わっ」
突然後ろから肩を叩かれて振り返ると、ニコニコと人懐っこい笑顔がすぐ近くに…
「きゃっ!!」
真っ赤になって離れると、笑顔は気づかうような表情に変わって、見下ろしてきた。