イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
榊くんは、怖い顔のまま抹茶ラテを見て小声で言った。
「抹茶パウダーが乗ってないぞ」
「あ…!」
そうだった…!
急いでいてすっかり忘れてた…!
回れ右!…をしたところで、榊くんにがっちりと腕をつかまれた。
「バカ。んなことしてたらラテが減るだろうが。最初から作り直してこい」
「は、はい…!」
5番テーブルは今、デザートだけが出された状態。
デザートはドリンクと出すのが基本だ。早く作らなきゃ…!
榊くんがお客のお姉さんに話しかけて時間かせぎをしてくれていた。
まちがわないように注意してドリンクを作り直して急いで行くと、お姉さんは榊くんと話するのに夢中で、ドリンクが来ないのも気にしてなさそうだった。
わたしが謝りながら出すと、お姉さんは全然怒った風もなく「わぁ美味しそう!」って褒めてくれた。
よかったぁ…。