イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「じゃあさー、好きでやってないなら、俺にその役ゆずってよ」


「は?」


「やさしいこの拓弥くんが、イヂめっ子な晴友に代わって日菜ちゃんの指導係やってやろう、って言ってんだよ」




榊くんは不愉快そうな顔のまま黙っていた。


その沈黙が、苦しかった。

榊くん…「ぜひそうしてくれ」って言うだろうなーーー…。




「だめだ」





え…?




「じゃあキッチンは?日菜ちゃんはスイーツを作る方が合ってるんじゃ…」


「それもダメだ」




暁さんにも即答する榊くん。




「なんだよー。『好きでやってない』んじゃなかったのかよー」




なぜかイタズラめいた顔でのぞきこむ拓弥くんをうるさがるように、榊くんはぶっきらぼうに言った。




「…こんなトロいやつに2週間も付き合ってきたんだ。ここまで来たら意地でも独り立ちさせねぇと俺の苦労が無駄になっちまうんだよ。俺はおまえらみたいにいい加減じゃないからな」
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