イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「…それは新作の試作だ。こいつ、もともとは常連だったやつだからな。意見を聞こうと思ったまでだ。これは俺のためにやってるのであって、別にこいつをどうしようとは」
『はいはい』
話半分な様子で一緒にうなづく拓弥くんと暁さん―――だけど、
「こらぁああ!拓弥っ!」
「暁くぅううん?」
パン!パン!
突然、乾いた音が2回、休憩室に鳴り響いた。
不意の一発を仲良く頭にもらった拓弥くんと暁さんが、ぎょっとして背後を振り返ると、
『仕事サボってなにしてるの、あんたたち?』
完璧に声をユニゾンさせて、シェフスタイルの祥子さんと、ホールスタッフの美南ちゃんが引きつった笑みを浮かべていた。