イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「話はあと!今はホールもキッチンも人がいないんだから早く戻るよ!
拓弥くんと暁くんは今の時間分の代わりとして一時間タダ働きね」
『えええ!!』と絶叫するふたりと、それを鼻笑う榊くん。
祥子さんはそんな榊くんにも、容赦ない通告を浴びせた。
「晴友もたしかに日菜ちゃんに厳しすぎ。これ以上日菜ちゃんを泣かせるようなことがあったら、時給半分にするからねっ」
「はぁあ!?」
「嫌だったら日菜ちゃんに謝って、次からもう少しやさしく教えてあげなさい。
ごめんね日菜ちゃん。うちのバカ弟、ちゃんと謝らなかったら教えてね。美南ちゃんにシめるように言っておくから」
「え…あ、はぁ…」
しどろもどろに返すしかできないわたしに、祥子さんが器用にウィンクを投げてくれた。
そうして、猫をつかむみたいに暁さんの後ろ襟をつかむとキッチンに戻っていく。
同じように美南ちゃんも拓弥くんの首根っこをつかんで、
「じゃあ日菜ちゃん、わたしと拓弥もホールに戻ってるから、ゆっくり休んでね」
と、親指を立ててグーサインを出して拓弥くんを引っ張っていった。