イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「美味しい!すっごくおいしいよ」
「そうか」
なんてそっけない榊くんだけど、眉間からはしわが消えて、形のいい唇の端が、すこし、上にあがった。
あ…
この顔、見たことがある…。
どことなく穏やかになったその表情は、まだお客さんとしてきていた時のわたしに向けてくれていたものと同じだった。
きゅん、と胸がうずく。
けど、それと同時に感じたのは、寂しいような切ない気持ち…。
わたしがお客としてお店に来た時は、新作ができると真っ先に紹介してくれたよね…。
美味しいって言ったら、今みたいにクールな顔をちょっとほころばせて微笑んでくれて。
生意気にちょっと要望を言っても、むしろ楽しそうに聞いてくれて…。
わたしは榊くんのこの笑みに惹かれてしまったんだよ。
好きで好きで、忘れられなくなってしまったんだよ…。
けど今は…。