イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
慣れた様子でミルクを泡立てカップにそそぎこんで。
撫でるようにさっと描いてあっという間に生まれたのは、誰もが認める森のクマさん。
背景に森の絵まで入れた、うちの人気メニューだ。
うう…やっぱり榊くんは上手だな…。
榊くんがドリンクを運んでいくと、それまでおしゃべりに夢中になっていたお姉さんたちが、はっとして話をやめた。
洗練された動きでカップを配る榊くんをじっと見つめる。
ちょっと、ぽうっとなってる…。
あ…話し掛けた…。
榊くんは、にこやかに応じる。
「えーこれホントにお兄さん作ったのぉ?」
「かわいい!」
楽しそうな声が聞こえてきて。
わたしの胸は、チクリと痛む。
しょっちゅう目撃してしまう光景だ。
でも、見た瞬間、いつも胸がきゅっとなって切ない気持ちになってしまう。
お客さまにこんな気持ちになっても仕方ないのに…。
そう、これはヤキモチ…。
だって。
わたし、立花日菜(たちばなひな)は、
ずっと、ずっと前から、
榊くんに恋をしているから…。