イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「うーん、拓弥くんは今日は休みなのよねぇ。
それに…拓弥くんにお願いしたら、この前すごいことになったから…」




たしかに…。

前回拓弥に任せたら、やたらにキザな宣伝をしたせいで女の客が殺到して、ひどい目に遭ったんだった。

売り上げはすごかったが…ホールはてんてこ舞いでキッチンは戦場、女たちはギャーギャーかまってきてうるさいわ、仕事の邪魔をされるわ…。


あんな大騒ぎは、もうこりごりだ…。




「その点、晴友はちょうどいいのよねー。
ヘンに煽らないけど、あんた目当ての女のお客さまは確実に呼び込めるから、穏やかーに混んで、かくじつーに売り上げアップするし」




「私よりずっとずーっと適任なのよね!」と手をモミモミしているあたり…こいつ、絶対恥ずかしかってるんじゃなくて計算した上で言っているな…。

売り上げは伸ばしたいけど楽したい、って守銭奴根性丸出しじゃねぇか。




「ヤだね。俺はやらねぇよ。
前も言ったろ、これが最後だって」


「えーそんなぁ!
だって今日は頼めるホールったらあんたしかいなくてぇ」


「あっそ」


「美南ちゃんも今日は休みだし、暁くんもキッチンにいてもらわなきゃだし…。
日菜ちゃんは今日入ってるけど…でもまだ任せられないしぃ」




日菜?
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