イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「はぁ…」
これで何回目のため息だろう。
今日のバイトは、ひときわゆううつだった。
「おい、日菜」
だって、晴友くんとふたりっきりのシフトだから。
入る前は夢にまで見ていたのにな…くすん。
「な、なぁに?」
また怒らるのかな…?
今日はまだなんにもしてないんだけど…。
「今日テレビの取材入るから、おまえが出ろ」
へ…。
これは、予想以上のイジワルです…。
「て、テレビ!?今日テレビが来るの!?」
「ああ。地元のローカル情報番組だってさ。ちょっと新作紹介して、リポーターの相手するだけだから、おまえでもできるだろ」
「そ、そんな…!」
普通のお客さまを相手するみたいに簡単そうに言われても…!
「しょ、祥子さんは!?」
「姉貴は用事で外出中」
「じゃ…じゃあ晴友くんが…」
以前だってテレビに出たの知ってるよ…!
しかも全国版の結構な人気番組で、その時が初めてのテレビ紹介だったんだよね。
ただでさえ口コミで人気が広まりつつあったのに、その紹介を機にいっそうお客さま(特に女の人)が増えちゃって、今もしょっちゅうできる行列は、その時から始まったんだから…!
「俺は絶対に嫌だ。テレビになんて二度と出ねー」