夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
……いわれて見れば、ヒコってモテるかもしれない。
  ライブの時だって、ひときわワーキャー言われている気がしなくもない。

 
「ウーロン茶でも、買ってく?」

「ポカリがいい。やっぱり頭痛いもん」

「あのね、いい加減自分でアルコール量調節してくれない?」

「……次回より善処させていただきます……」

途中寄ったコンビニで話をしながら、彩華はそんなことを考えていた。

初めて行った伸彦の部屋は、黒とシルバーで統一されて、綺麗に片付いていた。
学生には広めの2DK。
それはもう、端の方までびしっと整えられた感じで。

奥の部屋にはベッドが置いてあって、パソコンが載った机もある。
キーボードをはじめとした楽器も揃えておいてあった。

手前の部屋にはコタツサイズのテーブルと、大きな本棚があった。

勧められるがままあがりこんで、ペットボトルのままポカリを飲んだ。
ちなみに、伸彦は丁寧にウーロン茶をボトルからコップに入替えて飲んでいる。

……もしかしなくても、ヒコって潔癖症?

また、怒られそうなので口に出しては聞かなかった。

「なんで、彼女作らない主義なの?」

「面倒だから」

「面倒って!」

身も蓋もない返答に、彩華は仰け反る。

「実際、面倒でしょ?」

電源を切ったままの彩華のケータイをテーブルにおいて、伸彦が言う。

「でも、淋しいじゃん」

「別に」

……そうでした。ヒコの周りには人が寄ってくるんだった。

「私は淋しいなー。彼氏のいない二十歳の誕生日なんて」

「いつ?」

「来週」

「彼氏代わりくらいなら、なってやってもいいけど」

……
…………
………………

は?

彩華は耳を疑って、しばらく言葉も出なかった。
< 13 / 41 >

この作品をシェア

pagetop