夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
6.昨日 見た夢
結局、一晩中彩華はぐだぐだと取り戻せない過去について語り、伸彦は途中から話を聞くのをやめて機械的に相槌を打っていた。

カーテンの向こうから朝日が差し込んでくる。

「家、送ろうか?」

「うーん、いいよ。
ママが、朝帰りは駄目って言うの。
帰るなら午前11時以降じゃないと怒られる」

「どういう教育方針だよ」

「そういう教育方針よ。
子供の安全より、近所の目の方が大事なの。
分かるでしょ?」

「微妙だな」

「まぁね」

「ヒコ、今日暇?」

「キャンセルできない予定はないけど?」

「海行かない?」

「ぜってー風邪引く」

「海、見に行くだけ。
ほら、あそこのカフェ美味しかったじゃん?
モーニング食べたい」

彩華は夏のはじめにサークルの皆で遊びに行った海を思い出していた。
あの時は、とても楽しかったのに。

夏の終わりにこんなことが起きるなんて、予測も出来なかったなー。

「わざわざガソリンと時間を使って?」

「いーじゃん。
基本、学生なんてわざわざお金と時間を使って無駄なことをやる身分なんだからっ」

「開き直るな。
親が泣くぞ?」

「私、車大学においてるからとってくるね。
その中に着替と化粧品載せているから、シャワー借りていい?」

「ご自由にどうぞ」

「ありがとっ」

今日の予定を決めると、ようやく動く活力が出てきたらしく、彩華はバッグを掴んで伸彦の家を後にした。
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