夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
勢いよくしまったドアを眺めながら、伸彦は短くなった煙草を灰皿に押し当てた。
不規則な生活はいつものことだったので、ことさら眠かったりはしない。

でも、確かにシャワーを浴びれば身体もしゃんとしそうなので、先にシャワーを浴びることにした。



恋愛をしない主義、でなければ彩華と付き合っただろうか?

そんな考えがちらりと心を過ぎる。
そうかもしれない。

でも、やはり彼女と付き合って得られるのは「面倒な恋愛」だろう。

彼女が望むのはイベントに埋め尽くされた日常で、ジェットコースターのように乱高下する騒々しい毎日だ。

伸彦が求める、縁側に座ってお茶を啜っていたらあっという間に一日が終わっていた、みたいな緩やかな日々では退屈してしまってすぐにどこかに行ってしまうだろう。



面倒でない恋愛になら興味が持てるけど。
そんなの、あるんだろうか?

熱いシャワーが何もかも流していけばよいのに、と、思う。

この疲労も、
あいまいな想いも、
面倒な日常も。
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