夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
時間はまだ早く、学生には出会わない。

そんな道を歩きながら、彩華は思考をめぐらせていた。

……彼氏と別れた翌朝、別の男の家から朝帰り、はさすがにNGかなぁ。

なんて思ってみたり。

……でも、失恋した日の夜、友達の家で朝まで泣いて恋の傷を癒すのは全然ありでしょ?

って言い訳してみたり。

一人でとても忙しい。



伸彦のことが好きで仕方がない友人やら知り合いやらを今まで身近で少なくとも三人はみてきたけれど、彩華にはそんな異性的トキメキを感じる相手ではなかった。

っていうか、みんな、どっちかっていうと「アイドル」を見るような目線で伸彦に憧れているって感じにも見えたし。
そういう、ルックスではある。普段の服装にもこだわりを感じる。

人目を惹くし、人当たりも悪くない。
面倒見も良いし、何より要領が良いのだ。

後、何気に努力家ではある、と思う。
自分が興味のあることにのみ、だけど。

でも、そうやってちょっと遠くで見る分には華やかなんだけど、近くに居て一緒に話をすると、彼はそんなに華やかで騒々しくはない。

物静かで、穏やか。

彼氏というよりは、お父さんって感じなのだ。(いや、まぁ年齢のことを差っぴいてお兄さんと称しても良いけれど)



「友人だよね、友人」

親友、くらいまでには格上げできると思うけど。

なんてひとりごちながら、彩華は愛車のエンジンをかけた。
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