夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
シャワーを浴びながら(やっぱりシャワー室もものすごく綺麗だった)、彩華は唖然としていた。



ありえなくない?
ありえないよね。
ありえないって言って!

どれだけ記憶を辿っても、なんでそこまでヒコがモテるのか。
全くわからない。
尋常じゃないよね?
こんなに早朝から、黙ってお弁当作って届ける意味がわかんない。

私だったら、本人に直接手渡しますけど?


ああ、でも、彼女とここで遭遇しなくて本当によかった、と思う。
そんな熱烈なファン、怖いもん。

そういえば、近くの女子大に通う幼馴染の沙織に言われたことがあるかもしれない。

女子大には「伸彦くんのファンクラブ」なるものが存在するとか何とか。
冗談だと思って全然本気で聞いてなかったんだけど、

それって、たちの悪い実話だったりします?


もしかしてもしかしてもしかして。
ヒコは私に対してだけものすごく冷たくて、それ以外の全ての人にはめちゃくちゃハートウォーミングでジェントルマンなステキ態度だったりするのかしら?

絶対そうに違いない。
ヒコ酷いっ
ずるい。

私にもそーゆー表情を見せてくれればいいのに。
ケチ!



……あ。そうか。海に着くまでに何か聞き出してみよう!
  でも、お弁当あったら、朝食なんて食べに行く必要、無いよねー?



ぐるぐる考えをめぐらせた挙句、彩華はそんな考えに思い至った。
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