夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
「おはよう」

大学で朝出会った時と同じくらいさらりと伸彦が言う。

「おはよう……あの、うっかり寝ちゃったっ」

「眠れて何より」

「今何時?」

「3時過ぎ」

伸彦は手元の腕時計に目を落として答えた。

「ゴメン、今日バイト?」
「6時からだから余裕で間に合う」

「良かった〜」

伸彦は預かりっぱなしの車の鍵を取り出した。

彩華はほとんど無意識に手を伸ばす。

「いいよ。俺が運転する」

……え?


鍵を受け取るために伸ばした手が行き場をなくす。


ごく自然に伸彦はその手を掴んだ。
彩華は引っ張られるままについていった。
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