夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
「誕生日、いつ?」

「明後日」

「じゃあ、Little Tokyo借り切って誕生パーティーしよっか」

「嘘?」

唐突な申し出にびっくりする。

「木曜の夜だから、大丈夫だよ。
俺、交渉してくる」

「いや、でも、誰か来てくれるかな?」

想像以上の規模に、不安が募る。

「あのダーツバー、以前はライブハウスだったんだって。
だから、今でもライブ出来るんだ。
エイジたちも乗り気だし、ライブでパーティーって楽しそうじゃない?」

すごい発想だなーと、彩華は感心する。
と、ともにやはり不安が広がる。

「でも、人は?
集まるかなぁ」

「彩ちゃんの呼びたい人にだけ招待状を送ればいいよ。
ライブだってことにすると、また、面倒なことになりそうだし」

……ああ、ヒコのファンとか殺到しそうっ

実際、さっきからすれ違う子の何人かは、伸彦と視線を交わしたり、手を振ったりしていた。それにまた、いちいち律儀に答える伸彦ってすごい。

「うーん、いくらぐらいで貸切って出来るんだろう」
「あ、そこ、ただだから気にしないで」

「?なんで?」

彩華は首をかしげる。
伸彦は灰皿が設置してある長いすに座って煙草に火をつけたので、彩華もとなりに座った。

「あそこのマスターうちのサークルのOBで、近々そういうイベントも考えていたんだって。
だから、そのリハも兼ねて貸してもらえる話はしてある。
日付はまだ指定してないんだけどね」

……えー、もう、そこまで手配してくれてたわけ?

彩華の心臓は、とくん、とくんと、ときめきを感じていることを現し始める。

……いやいや、勘違いだから。
  っていうか、好きになる=ヒコのファンの一人になるってことだし。
  それは、嫌でしょ?

彩華は自分の心臓に言い聞かせていた。
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