夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
伸彦は足を進めながらため息をつく。

店のドアを開けなくても状況は察しがついた。
崇城はきっと、元カノである林野智子(はやしのさとこ)を連れているのだろう。

というか、気付いてないのは彩華本人だけなんじゃないだろうか。

恋愛なんて煩わしい。

「いらっしゃい、伸彦君」

ドアを開けるとマスターが声を掛けてくれた。

「こんばんは」

ゆっくりと店内を見回す。
目に入るところに、崇城と林野はいて、ダーツを楽しんでいた。

「友達を探しにきたんですけど、もう帰りましたかね〜?」

人懐っこい笑顔で、マスターを見る。

「酔いつぶれていたお嬢ちゃん?
さっき裏から出て行ったよ」

マスターは声を潜めて教えてくれた。

「すれ違ったかな?
電話してみます」

好青年、としか表現しようのないような笑顔でさらりと言うと、伸彦は店を後にした。
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