夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
彩華は、夜の路地裏にぽつりと立っていた。

目の前を通り過ぎるカップルとか、騒いでいる学生とか、ぼんやりと眺めていた。

どこで間違えたのだろう、と思う。

新入生歓迎ライブが終わった後の打ち上げで、崇城が声を掛けてきた。
付き合い始めたのはその2週間後だったと思う。

車に乗せてもらって、一緒に色々遊びに出かけた。
蛍を見に行って、帰りの車でキスをした。

反省点があるとしたら、その夜、セックスを拒んだことだろうか?
あまりにも急な展開についていけなかっただけなのに。

まさかね。
そんな昔のことが原因のはずなんてない。

結局その年の花火大会が終わった後に、二人は関係を持った。

崇城が就職しても、二人の関係にはそんなに変化はなかった。

崇城は忙しくなってはいたし、その淋しさを紛らわせるため彩華は大学の友人たちと遊び歩くようにはなったけれども。


「彩」

ぼーっとしている彩華に、伸彦のほうが声を掛けた。

「あ、ヒコ。
……ごめんね、私、帰る」

「送るよ」

珍しいほどの優しい申し出に、彩華は目が点になる。

伸彦ははぁっとため息をついた。

「覚えてないと思うけど、飲み会の後、お前を家まで送り届けているのは大抵俺だから」

「うっそ?」

「……失礼なやつだな、本当」

きょとんとする彩華に、伸彦はため息をついた。

「だって覚えてないんだもん。仕方ないじゃん」

「……仕方なくねぇよ。
反省しろ、反省」
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