夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
「反省って言われても、わかんないんだもんっ」

伸彦の【反省】という言葉で、彩華にスイッチが入ったようだった。
話の流れを一切無視して、自分の感情を吐き出し始める。

「彩華の何が悪かったの?明のバカっ」

声を荒げた彩華に、通りすがりの人が驚いて視線を投げる。

「崇城さんに聞きに行くなら付き合うけど?」

伸彦がさらりと言う。

彩華は顔をあげて、伸彦を見つめた。唐突に何を言うんだろうと思ったが、伸彦の表情はいたって真剣だった。

「……ううん。もういいや。今のうちに合鍵突き返してくる。じゃあまたね」

早口に言うと、彩華は踵を返して歩き始めた。
切なくて悲しくて涙が溢れる。


伸彦はその去り行く震える背中を眺めていたが、ふう、とため息をついてからそれを追うことに決めた。

面倒ごとも恋愛ごとも好きではないが、酔っ払いの友人をこの街に置き去りにする勇気もなかったのだ。

とん、と彩華の肩を叩く。

「ヒコ?」

振り向いた彩華は驚いて慌てて涙を拭う。

「仕方ない。朝まで付き合うよ」
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