それでもボクはキミを想う

次の土曜日に、久しぶりにオヤジと会うと驚く展開が用意されとった。

『仁、久しぶりやな!元気やったか?』

『まぁ、忙しいけど元気やったで。
おじぃは?』

『ああ、おじぃなぁ、お前が出て行ってから、寂しかったんか、年のせいもあって、ちょっと認知症が出てきとったん知っとったやろ?
それが、ここ数ヶ月で何やひどなってしもて、日常生活も一人ではできんようなってしもた。
あんな優しかったおじぃが、暴言はいたり、体は丈夫や思とったけど、転んで足怪我してからほぼ寝たきりなって、世話しよ思たら叩いたり噛んだりしてな…
おじぃがわかっとらんとしとる事も、わしにはわかっとるんやけど…
なんぼ病気のせいや言われても、暴力はあかんし、わし一人じゃ手に負えんよぉなってきてなぁ…
ヘルパーさんに来てもろとったんやけど、一昨日にそのヘルパーさん殴ってもて大変やったんや…』

『えっ、ホンマなんか!?
あの温厚なおじぃが暴力振るうなんて信じられへんわ!!』

『わしも信じがたいんやけど、そんなひどない思うとったけど、市役所から介護認定通知が“要介護3”で驚いたんや。
そんで今、津田沼病院の精神科の方で入院しとるんや。
わしの顔も分からん様なってきとる。
仁、お前のことも会うても、もう分からんかもしれへんで…』

お父はんの口からおじぃのショックな今を知らされ、ボクは言葉に詰まったが、それでもおじぃに会いとおて、後でオヤジとボクでおじぃに会いに行く事にした。

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