それでもボクはキミを想う

次の日に悠人の部屋に呼ばれて入ると、前の日の浮かれた気分はガラガラと音がする様に崩れて消えた。

すでにもう一人女の子がいたのだ。

悠人が座ると…
その隣には私はいなくて、
当たり前の様に座るその女の子!

無言でその二人の前に座る私。
見る気にもならないけど、嫌でも私の視界に入ってくる二人。

『莉乃には、黙っててすまないと思ってる…
コイツ、麻里花(まりか)とは同じ大学の学部で知り合ってさ…
俺さぁ…
麻里花に莉乃の事、何度も言おうと思ってたんだぜ…
あっ、別に麻里花が悪い訳じゃないんだ!
責任は誘った俺にあるんだけどさ…』

『ごめんなさい!!
松宮(まつみや)くんは悪くないの…私が…私が…』

井上麻里花(いのうえまりか)というその子は大きな瞳から涙を流しながら私に言いかけた…

あたふたする悠人をみれば、一気に私の恋心は冷めて、急に悠人は知らない人に変わった感じ…
その時の私にはプライドが保たれてたのか悲しみよりため息しかでなかった。
私が居るのに完全に二人の世界へ旅立ち、何だか私の方がバツが悪い。

悠人、気づいてる?
私でなく、その麻里花って娘を私から必死にかばいながら抱きよせてる!


もう、あなたの中には私はいない…


それでも私の心の中でふつふつ出てくる怒りや悲しみに嫉妬心は 、まだ悠人に未練がある印。
私は、そんな嫌な心を持ちたくないと思いながら、話を続ける悠人に一言割り込んだ。

『もぉいいよ……
バイバイ、松宮くん…』

私は『悠人』と呼んでた名前を
『松宮くん』と呼び変えた。

一瞬、悠人は驚いた。

『俺は…
莉乃の事大事に思ってたから、お前が心ひらくのを待ってたんだ!!
でも俺だっていつまでも我慢できねぇんだよ!!
莉乃は初めから俺の事、男として見てなかったんだろ?
今までありがとな!じゃあな!!』

悠人がそんな言葉を吐き捨てたのと同時に、俯いて泣いてたはずの麻里花の勝ち誇った笑を垣間見た。
もう話す事ない私は、悔しさと恥ずかしさを胸に抱えて悠人の家を後にした。
 
ほんとは形振り構わず叫んで抱きついて泣きたかったし、私だって悠人に抱いて欲しかった。

でも、悠人に自分のすべてをさらけ出すのが怖かった…

悠人とは体はまだでも心は繋がってる…
私が彼女なんだと思ってたから。


なんで許してあげなかったんだろ…

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