それでもボクはキミを想う
ボクは後から付いていき、“どんな走り”を魅せてくれるか楽しみやった。
一本目を軽く流して、
“ライン取りは良さそうやな?”
と思い、本番に少し期待しとった。
二本目に入ってからも、思ったより走れるなと思った。
ドリフトするタイミングもええし、何よりコントロールも的確にしよる。
『…ええかもしれへん…
莉乃ちゃん、怖かったら目つむり。
ちょっとボク、遊ぶわ…』
『あっ…はい…』
キミにそう言うて、メインに向けてボクは徐々に響くんのドリフトにタイミングを合わして追い上げた。
そしてメインに差し掛かり…
“3…”
“2…”
“1…”
『ここや!!』
ギャアアアアアア…!!
ギャアアアアアア…!!
それは、メインコーナーのセフィーロとローレルの二台の息の合ったツインドリフトやった。
『 響くん、ええ腕しとるわ。
久々に興奮した…』
景色がスローで移るけど、何だか風にのったみたいに凄すぎて心臓が止まりそうだと私は思った。
『 私、スゴイ瞬間にいたんだね!
自分の弟があんなにスゴイ走りするのも知らなかった!!』
走った後、ギャラリーの駐車場に車を止めた。
『一ノ瀬さん、ありがとうございました!!
僕、ドリフトして、あんなに気持ちよかったの初めてです!
しかも、今まで一人で走ってたので、ツインなんて…しかも憧れてた一ノ瀬さんとなんて夢みたいです!』
『なぁ、響くんは“ Deadline”知ってるやろ?
ボク“No.5”抜けて“No.3”に行くんや。
そんで、ツインをメインに大会にでるんやけどボクとやらん?』
『えっ?ぼっぼぼぼ僕がですか?』
『せや、拒否権はないで…』
無言の圧力をかける…
『はっはいっ!!よろしくお願いします!』