それでもボクはキミを想う
『オヤジ、起こすさかい向こう行っといてぇな。』
『ええやないか?
仁、わしの娘になるかもしれんその子の名前も教えてくれへんのか?
つれへんのぉ。』
そんなんオヤジに名前教えてしもたら絶対
“莉乃ちゃん、莉乃ちゃん”言うて煩いのわかっとるからわざと呼ばんのや。
『どうせ後でわかるやろ。とりあえず向こうに戻っといてや。普通起きてオヤジおったら嫌やろ?』
何やかんや言うてくるんを“ハイハイ”と適当に宥めながらハコスカのとこまでオヤジをおしやってからキミを起こしに行った。
運転席に座り、隣に寝とるキミの無防備な顔見ながら
“まだ…告ってもないのに……”
何て柄でもない事呟きながらも、どないして起こしたろか考えとったら、キミがちょうどぼんやりと目を開けよった
『着いたで…』
結局ボクはちょっとキミに顔近付けて髪を撫でながら普通に言うた。
『ん…っ…』
キミは寝ぼけ眼にボクを見てびっくりしよった。
『ごめんね!!すっかり寝ちゃってた!』
私はぼんやり目を開ければあなたの顔があまりに近くてびっくりした。
『気にせんでエエで。
邪魔入ったけどキミの可愛え寝顔ゆっくり拝ませてもろたわ。ほな、降りてな?』
キミはこくりと頷いて車から降りると、やっぱり車いじりながらこっち見とったオヤジに気づいて挨拶しとった。
案の定“莉乃ちゃん、莉乃ちゃん”とニヤニヤしながら絡んでくるオヤジに捕まって話とった。
キミをオヤジからサッサと奪い、ボクはオヤジに向かって“ついて来たらアカンで!!”の威嚇した意味深な笑顔をニイッと口角上げて魅せて家の中に連れていった。