どうしてほしいの、この僕に
今、私の名前を発音するとき、かわいらしい声に似合わぬ悪意を感じたのだけど、つまりあの事故で私が優輝から仕事を奪い、同時に明日香さんから優輝を奪った、と。
じゃあ私がわざと優輝にけがをさせたとおっしゃるわけ?
「私はオーディションで不合格だったのは当然の結果だと思っています。でも守岡さんがけがをしたのは……」
「あなたのせいでしょ?」
「それはそうですが」
「私が優輝さまと共演するチャンスをぶち壊してくれたことには変わりない。違う?」
「それは……」
見事に追い込まれた。否定したいけどできない。明日香さんの言っていることは間違っていない。
「でも私は意図的にあの事故を起こしたわけじゃな……」
「あんな見るからに危険な場所で、足元に注意を払わないなんて、意図的に転んだのと同じでしょ」
違う。あのとき私は優輝にトラブルメーカー扱いされ、頭にきていたのだ。
とはいえ、気をつけて歩くこともできたはず。
その結果、明日香さんがオーディションで勝ち取った栄誉を、私が奪取した——ということになってしまうのか。
「ごめんなさい」
「あやまってもらってもどうにもならないし」
力のない弱々しい声だった。
「本当にごめんなさい」
結局私にはあやまることしかできない。それで事態に変化があるわけでもなく、彼女の気持ちが救われるわけではない、そうわかってはいても——。
「優輝さまはあなたのことを気に入っている。オーディションの最終審査が始まってすぐにわかったの。あなたを見ているとき、優輝さまはとても楽しそうな顔をしていたから。それで私、あなたが撮影所に来たのがすごく嫌だった」
なるほど「だって『ミリ』は『無理』って意味でしょ? ぴったりの名前だと思ったから」というセリフは、嫌悪感からくる正真正銘の悪口だったのか。
明日香さんが私にぶつけてきたのは、つまるところ嫉妬というやつらしい。
でも私からすれば、優輝にぐいぐい近づいていける明日香さんのほうがすごいと思う。それは優輝に好かれている自信があるからこそ、できることではないのか。
自信——か。そんなの、全然ない。
「私、あなたみたいな努力しない女が一番嫌い」
明日香さんが私に一歩近づく。座っている私は当たり前だけど逃げられない。
急に火がついたみたいに全身が熱くなった。
じゃあ私がわざと優輝にけがをさせたとおっしゃるわけ?
「私はオーディションで不合格だったのは当然の結果だと思っています。でも守岡さんがけがをしたのは……」
「あなたのせいでしょ?」
「それはそうですが」
「私が優輝さまと共演するチャンスをぶち壊してくれたことには変わりない。違う?」
「それは……」
見事に追い込まれた。否定したいけどできない。明日香さんの言っていることは間違っていない。
「でも私は意図的にあの事故を起こしたわけじゃな……」
「あんな見るからに危険な場所で、足元に注意を払わないなんて、意図的に転んだのと同じでしょ」
違う。あのとき私は優輝にトラブルメーカー扱いされ、頭にきていたのだ。
とはいえ、気をつけて歩くこともできたはず。
その結果、明日香さんがオーディションで勝ち取った栄誉を、私が奪取した——ということになってしまうのか。
「ごめんなさい」
「あやまってもらってもどうにもならないし」
力のない弱々しい声だった。
「本当にごめんなさい」
結局私にはあやまることしかできない。それで事態に変化があるわけでもなく、彼女の気持ちが救われるわけではない、そうわかってはいても——。
「優輝さまはあなたのことを気に入っている。オーディションの最終審査が始まってすぐにわかったの。あなたを見ているとき、優輝さまはとても楽しそうな顔をしていたから。それで私、あなたが撮影所に来たのがすごく嫌だった」
なるほど「だって『ミリ』は『無理』って意味でしょ? ぴったりの名前だと思ったから」というセリフは、嫌悪感からくる正真正銘の悪口だったのか。
明日香さんが私にぶつけてきたのは、つまるところ嫉妬というやつらしい。
でも私からすれば、優輝にぐいぐい近づいていける明日香さんのほうがすごいと思う。それは優輝に好かれている自信があるからこそ、できることではないのか。
自信——か。そんなの、全然ない。
「私、あなたみたいな努力しない女が一番嫌い」
明日香さんが私に一歩近づく。座っている私は当たり前だけど逃げられない。
急に火がついたみたいに全身が熱くなった。