どうしてほしいの、この僕に
 反論しようと口を開きかけたが、先手を打ったのは優輝だった。
「上手にキスできたら、スペシャルドラマ、俺からも未莉を相手役に推してやるよ」
 くぅっ!!
 そんなこと言われたら、できないとは言えなくなる。
「ほら」
 優輝は私の二の腕をつかんで引っ張った。
 互いの顔が急接近する。私は目を見開いたまま優輝の鼻先で固まった。
 ——もしスペシャルドラマで共演してしまったら、優輝に沙知絵さんの言葉を伝えなければならない……。
 優輝の幼馴染、沙知絵さんの小柄な容姿を思い出すと、なぜか胸がキリキリと痛み、急に焦燥感がこみ上げてきた。
 ぎゅっと目を閉じ、四つん這いになった。羞恥心をこらえて少しずつ唇を近づける。
 ギリギリまでくると恥ずかしい気持ちは消え去り、押さえきれないほど胸が高鳴る。
 そっと唇が触れ合った。
 神聖な口づけはほんの数秒だけで、どちらともなくむさぼるようにキスを重ねた。
 そのうち優輝の指が私の胸をかすめる。パジャマの上からとはいえ、四つん這いの体勢だから、先端を探り当てるのは容易だった。彼は指の動きを次第に早め、尖っている部分を執拗に攻めた。
 口づけの合間に甘い吐息が漏れる。
 頭の芯がしびれるような感覚と同時に、腰の奥に不埒な熱が呼び覚まされた。
 目を閉じていると優輝に触れられている部分だけに意識が集中する。彼の指の動きが生み出す淫らな喜び。それが徐々に高まっていく。
「未莉がかわいいから許す」
 息も絶え絶えな私を胸に抱いて、優輝は静かに言った。
「……許すって、何を?」
「実家の俺の部屋に無断で入ったこと」
「あ……ありがとうございます」
 のぼせ上がった身体の熱が一気に冷めていく。
 もしかして今の辱めはおしおきだったの?
 まぁ、言葉で責められなくて助かったかな。——いや、ちょっと待て、私。それだと言葉責めより、身体に直接辱めを受けるほうがいいと感じたみたいじゃない?
 そんなわけない。断じてそんなわけがない!
 でもさっきみたいな行為が怖いわけでもないし、嫌なわけでもない。だから「やめて」とは言えなくなっている。これはまだ酔いが残っているせい?
 それにしても優輝の胸が温かい。気だるいのにこの上なく幸せな気分で満たされる。
 ——ずっとずっとこうしていられたらいいのに。
 儚い願いとは知りつつも、私はすがるように目を閉じた。
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