どうしてほしいの、この僕に
私の隣で、姉が不愉快そうに言った。成田プロの社長は姉の元カレだ。姉の機嫌が悪くなるのは当然だった。
妙に若作りな社長は姉に屈託のない笑みを向ける。
「ずいぶんひどいじゃないか。ここは私の別荘だ」
「そうでしたね。勝手にお邪魔しております」
「おや、これはまた、ずいぶんバラエティに富んだ顔ぶれだな。まぁ、玄関で立ち話もなんだ。向こうで話そうじゃないか」
一同を見渡した成田プロの社長は、この別荘の主でもあり、この場では年長者である。さすがの貫録でとりあえず全員を大広間へ移動させた。
「あの……制作発表は!?」
「中止になった」
それぞれが自分の居場所を確保する隙をついて、ソファの隣に座った優輝に小声で確かめたところ、彼は短くそう答えた。
ドラマ制作スタッフ陣の顔が次々に思い浮かぶ。これまで陰で支えてくれた人たちに迷惑をかけてしまったのだ。理由はどうあれ、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
スペシャルドラマは無事に放映されるのだろうか、と心配になる。
「さて、自己紹介でもしようか」
成田プロの社長がおどけて言うのを鋭く制したのは、意外なことに高木さんだった。
「この場を和ませる必要はないですよ。今、我々がこうして集まったのは犯罪の全容を暴くためなので」
「犯罪!? おいおい、穏やかじゃないな」
「社長。とぼけるのもいい加減にしてください」
優輝がぴしゃりと言い放った。
「どこまでも甘やかすつもりですか」
「何の話だ?」
さすがに社長の顔が曇る。
「今日のスペシャルドラマ制作発表記者会見が中止になったのはご存知ですね」
「ああ、ヒロイン役の女優が突然体調不良で倒れて、救急搬送されたそうじゃないか」
「違います。そのヒロイン役の女優はここにいます」
優輝は私の肩を抱いた。
途端に姉を除く女性たちの敵意をむき出しにした眼光が私に突き刺さる。
成田プロの社長の顔から表情が消えた。
「彼女は会場から連れ去られた。そこにいる友広和哉の仕業です」
「和哉、お前……」
社長はギリギリと奥歯を噛みしめる。
「しかしなぜ私に連絡がない?」
「あなたに連絡したらもみ消すでしょう。何事もなかったように記者会見は行なわれ、友広和哉は誰からも咎められない。……しかしそれはもう通用しません」
妙に若作りな社長は姉に屈託のない笑みを向ける。
「ずいぶんひどいじゃないか。ここは私の別荘だ」
「そうでしたね。勝手にお邪魔しております」
「おや、これはまた、ずいぶんバラエティに富んだ顔ぶれだな。まぁ、玄関で立ち話もなんだ。向こうで話そうじゃないか」
一同を見渡した成田プロの社長は、この別荘の主でもあり、この場では年長者である。さすがの貫録でとりあえず全員を大広間へ移動させた。
「あの……制作発表は!?」
「中止になった」
それぞれが自分の居場所を確保する隙をついて、ソファの隣に座った優輝に小声で確かめたところ、彼は短くそう答えた。
ドラマ制作スタッフ陣の顔が次々に思い浮かぶ。これまで陰で支えてくれた人たちに迷惑をかけてしまったのだ。理由はどうあれ、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
スペシャルドラマは無事に放映されるのだろうか、と心配になる。
「さて、自己紹介でもしようか」
成田プロの社長がおどけて言うのを鋭く制したのは、意外なことに高木さんだった。
「この場を和ませる必要はないですよ。今、我々がこうして集まったのは犯罪の全容を暴くためなので」
「犯罪!? おいおい、穏やかじゃないな」
「社長。とぼけるのもいい加減にしてください」
優輝がぴしゃりと言い放った。
「どこまでも甘やかすつもりですか」
「何の話だ?」
さすがに社長の顔が曇る。
「今日のスペシャルドラマ制作発表記者会見が中止になったのはご存知ですね」
「ああ、ヒロイン役の女優が突然体調不良で倒れて、救急搬送されたそうじゃないか」
「違います。そのヒロイン役の女優はここにいます」
優輝は私の肩を抱いた。
途端に姉を除く女性たちの敵意をむき出しにした眼光が私に突き刺さる。
成田プロの社長の顔から表情が消えた。
「彼女は会場から連れ去られた。そこにいる友広和哉の仕業です」
「和哉、お前……」
社長はギリギリと奥歯を噛みしめる。
「しかしなぜ私に連絡がない?」
「あなたに連絡したらもみ消すでしょう。何事もなかったように記者会見は行なわれ、友広和哉は誰からも咎められない。……しかしそれはもう通用しません」