どうしてほしいの、この僕に
罪を糾弾されている友広くんは、私たちの向かい側にサイティさんを拘束した状態で座り、あからさまに優輝から顔をそむけていた。
「僕に脅迫文を送ったのは友広和哉、彼だ。社長、そうですね?」
「い、いや……それは」
「どういうことよ」
姉が焦れたように説明を要求する。
優輝は姉と私を横目で見て、困ったように自分の前髪をわしづかみにした。
「彼は社長の隠し子です」
——え!?
愕然とする私の横で、姉が息を呑む。
「……高木くんも知っていたの? いつから?」
「最近だよ。だけどこれはうちの事務所の問題だから」
「未莉がこの男に連れ去られたのよ。成田プロだけの問題じゃないでしょ!?」
姉は立ち上がって主張する。それをサイティさんが鼻でフンと笑った。
「あなたたちがいくら騒いだって、どうせ事件にはならないのよ。柴田未莉の狂言で記者会見が中止になった——そんなところよ」
「事務所の力を使ってもみ消すつもり?」
姉の怒りが増す。
「だって成田プロに不祥事が起きたら大勢の人が困るもの。ね、社長?」
サイティさんが同意を求めるように社長を見ると、怪訝そうな視線が彼女へ向かった。はじめて彼女の存在に気がついたらしい。
「君、失礼だがお名前は?」
「脚本家のサイティです」
ピンとこない表情のまま社長は質問を繰り出す。
「君はここで何をしている? 和哉が君を取り押さえているように見えるが?」
一同の視線を浴びても、ふてぶてしいほどに毅然としているのはさすがというべきか。しかし彼女の口からは、この状況の説明も弁解も出てこない。
代わりにこれまでずっと黙っていた友広くんが答えた。
「サイティというのはペンネームで、彼女の本名は竹森サイラです。聞き覚えはありませんか?」
「……う、うむ」
「以前成田プロに所属していたことがあります」
「ああ、思いだした! ほら、あのクレーム案件の……」
後半は高木さんのほうを向き、何かを指図するように指をふった。
高木さんはわかっているというように小さく頷く。
「彼女はクライアントとトラブルを起こして干された元モデルで、今は西永さんに拾われている」
「なにっ!? 西永くんが」
竹森サイラというモデルの名は知らなかったが、彼女が揉め事を起こし、モデルを続けられなくなったのは、成田プロ内ではかなり大きな事件であったらしい。
「僕に脅迫文を送ったのは友広和哉、彼だ。社長、そうですね?」
「い、いや……それは」
「どういうことよ」
姉が焦れたように説明を要求する。
優輝は姉と私を横目で見て、困ったように自分の前髪をわしづかみにした。
「彼は社長の隠し子です」
——え!?
愕然とする私の横で、姉が息を呑む。
「……高木くんも知っていたの? いつから?」
「最近だよ。だけどこれはうちの事務所の問題だから」
「未莉がこの男に連れ去られたのよ。成田プロだけの問題じゃないでしょ!?」
姉は立ち上がって主張する。それをサイティさんが鼻でフンと笑った。
「あなたたちがいくら騒いだって、どうせ事件にはならないのよ。柴田未莉の狂言で記者会見が中止になった——そんなところよ」
「事務所の力を使ってもみ消すつもり?」
姉の怒りが増す。
「だって成田プロに不祥事が起きたら大勢の人が困るもの。ね、社長?」
サイティさんが同意を求めるように社長を見ると、怪訝そうな視線が彼女へ向かった。はじめて彼女の存在に気がついたらしい。
「君、失礼だがお名前は?」
「脚本家のサイティです」
ピンとこない表情のまま社長は質問を繰り出す。
「君はここで何をしている? 和哉が君を取り押さえているように見えるが?」
一同の視線を浴びても、ふてぶてしいほどに毅然としているのはさすがというべきか。しかし彼女の口からは、この状況の説明も弁解も出てこない。
代わりにこれまでずっと黙っていた友広くんが答えた。
「サイティというのはペンネームで、彼女の本名は竹森サイラです。聞き覚えはありませんか?」
「……う、うむ」
「以前成田プロに所属していたことがあります」
「ああ、思いだした! ほら、あのクレーム案件の……」
後半は高木さんのほうを向き、何かを指図するように指をふった。
高木さんはわかっているというように小さく頷く。
「彼女はクライアントとトラブルを起こして干された元モデルで、今は西永さんに拾われている」
「なにっ!? 西永くんが」
竹森サイラというモデルの名は知らなかったが、彼女が揉め事を起こし、モデルを続けられなくなったのは、成田プロ内ではかなり大きな事件であったらしい。