どうしてほしいの、この僕に
ハッピーエンドを期待していたら、裏切られたと感じるかもしれない。
私も撮影が終わった直後は、こんなラストでいいのかとすっきりしない気分だった。
エンドロールにサイティという名前を見つけた柚鈴は「チッ」と舌打ちする。
「でもまぁ、意外にいい話だった」
「うん。ラスト以外は、ね」
「確かにラストは少しがっかりしたけど、私はそんなに嫌いじゃないな。未莉の雰囲気と役柄がすごくマッチしていて、とてもよかった」
毒舌の柚鈴からこれほどの褒め言葉を引き出したのだから、ドラマは大成功と言えるのではないか。
嬉しいやら恥ずかしいやらで、顔が紅潮する。
それに柚鈴がこのラストを嫌いじゃないと言ってくれたのが望外の喜びだった。
——友広くんは見てくれただろうか。
姫野明日香の事務所からの圧力でラストを変更したらしいが、本当はこのラストこそ脚本家サイティの望む結末だったのではないか、と今では思う。
彼女の中で異母弟である友広くんは絶対的な存在なのだ。そして何があっても味方をしてくれるゆるぎない存在こそ、彼女が心の底から欲していたものかもしれない。
——本当のところは竹森サイラにしかわからないけど。
私は彼女の想いを代弁するつもりで演じてはいないが、彼ならきっと異母姉からのメッセージに気がつくはず。
——友広くんの気持ちはきちんと届いているよ。だから「人を好きになるのは……ただ苦しいだけ」なんて思わないで——。
祈るように手を組んで、にぎやかなCMを映すテレビ画面を見つめる。
誰かを想う気持ちがいつも報われるとは限らないけど、それはやっぱり尊いものだと私は思う。
柚鈴がためらいがちに「ねぇ」と声を上げた。
「守岡くんはどうしているの?」
「……さぁ?」
正直に答えると柚鈴はリモコンを手に取り音量を絞る。
「これって結局犯人の思うつぼじゃない! そりゃ、守岡くんはどんな誘惑にも負けるような男じゃないけど、君たちが離れ離れになるのはよくないよ!」
急に真剣な表情で柚鈴が怒りだした。
「そうかな」
「そうだよ。『ふたりはこれから』ってときなのに!」
私は「まぁね」と苦笑いする。
確かに恋愛の段階ではこれからが楽しいときなのだろう。
「なんで未莉はそんなに冷静なの? それ、全部あきらめちゃっているみたいな顔だよ」
私も撮影が終わった直後は、こんなラストでいいのかとすっきりしない気分だった。
エンドロールにサイティという名前を見つけた柚鈴は「チッ」と舌打ちする。
「でもまぁ、意外にいい話だった」
「うん。ラスト以外は、ね」
「確かにラストは少しがっかりしたけど、私はそんなに嫌いじゃないな。未莉の雰囲気と役柄がすごくマッチしていて、とてもよかった」
毒舌の柚鈴からこれほどの褒め言葉を引き出したのだから、ドラマは大成功と言えるのではないか。
嬉しいやら恥ずかしいやらで、顔が紅潮する。
それに柚鈴がこのラストを嫌いじゃないと言ってくれたのが望外の喜びだった。
——友広くんは見てくれただろうか。
姫野明日香の事務所からの圧力でラストを変更したらしいが、本当はこのラストこそ脚本家サイティの望む結末だったのではないか、と今では思う。
彼女の中で異母弟である友広くんは絶対的な存在なのだ。そして何があっても味方をしてくれるゆるぎない存在こそ、彼女が心の底から欲していたものかもしれない。
——本当のところは竹森サイラにしかわからないけど。
私は彼女の想いを代弁するつもりで演じてはいないが、彼ならきっと異母姉からのメッセージに気がつくはず。
——友広くんの気持ちはきちんと届いているよ。だから「人を好きになるのは……ただ苦しいだけ」なんて思わないで——。
祈るように手を組んで、にぎやかなCMを映すテレビ画面を見つめる。
誰かを想う気持ちがいつも報われるとは限らないけど、それはやっぱり尊いものだと私は思う。
柚鈴がためらいがちに「ねぇ」と声を上げた。
「守岡くんはどうしているの?」
「……さぁ?」
正直に答えると柚鈴はリモコンを手に取り音量を絞る。
「これって結局犯人の思うつぼじゃない! そりゃ、守岡くんはどんな誘惑にも負けるような男じゃないけど、君たちが離れ離れになるのはよくないよ!」
急に真剣な表情で柚鈴が怒りだした。
「そうかな」
「そうだよ。『ふたりはこれから』ってときなのに!」
私は「まぁね」と苦笑いする。
確かに恋愛の段階ではこれからが楽しいときなのだろう。
「なんで未莉はそんなに冷静なの? それ、全部あきらめちゃっているみたいな顔だよ」