どうしてほしいの、この僕に
彼の視線は熱くもなく、かといって、冷たくもなかった。ただ不思議そうに私を眺めている。この人の場合、正面に座っていたのがたまたま私だったから、私を見ているだけなのかもしれない。首を動かして他の人を眺めるのが面倒なんじゃないかな、と。しかも私は最終選考に残ったメンバーの中で、唯一演技経験のないド素人だから、はじめて見る顔が珍しかった……って、私は珍獣扱いか!
「それでは実技を開始します。カメラも回しますからね」
西永さんの心地よい低音ボイスで私は5分が経過したことに気がついた。同時にいつの間にか胸の痛みがおさまっていることにも……。
立ち上がる守岡優輝。なんだろう、ひとつひとつの動作が絵になる男だ。テレビに映っているからそう見えるわけじゃなくて、本物が本当にかっこよかったんだ、と妙な感慨に浸る。しかも思ったより背が高い。だらしない格好で座っていたから気がつかなかったけど、これが案外ひょろひょろしていなくて、胸板の厚みがそれなりにありそうだ。引き締まった筋肉が服の内側に備わっていることを想像すると、突然顔が発火しそうなほど熱くなった。
不覚にも守岡優輝に見とれている自分に、私はものすごく動揺していた。
彼はイケメンでしかも演技派と評される人気俳優だ。彼が出演するドラマや映画は常に話題作となり、そのほとんどが高く評価されている。演技に対するストイックな態度がベテラン俳優陣にも絶賛され、彼をけなす声のほとんどがやっかみだった。
もちろん私だってイケメンが好きだし、むしろイケメンしか好きではないくらいだから、人並みに守岡優輝をいいなと思っていた。
でもそれはあくまで彼をテレビやスクリーンで見るタレントと認識した上での「いいな」であって、生身の守岡優輝は私とは別世界に生きる人だ。ついさっきまでは私の半径1メートル以内に存在するはずのない人……だったのに!
最終選考に残ったのは全部で7名。1番の人から順に守岡優輝との実技試験が始まった。この中からテレビドラマのヒロインが決まる。
「ほら、これ」
「それでは実技を開始します。カメラも回しますからね」
西永さんの心地よい低音ボイスで私は5分が経過したことに気がついた。同時にいつの間にか胸の痛みがおさまっていることにも……。
立ち上がる守岡優輝。なんだろう、ひとつひとつの動作が絵になる男だ。テレビに映っているからそう見えるわけじゃなくて、本物が本当にかっこよかったんだ、と妙な感慨に浸る。しかも思ったより背が高い。だらしない格好で座っていたから気がつかなかったけど、これが案外ひょろひょろしていなくて、胸板の厚みがそれなりにありそうだ。引き締まった筋肉が服の内側に備わっていることを想像すると、突然顔が発火しそうなほど熱くなった。
不覚にも守岡優輝に見とれている自分に、私はものすごく動揺していた。
彼はイケメンでしかも演技派と評される人気俳優だ。彼が出演するドラマや映画は常に話題作となり、そのほとんどが高く評価されている。演技に対するストイックな態度がベテラン俳優陣にも絶賛され、彼をけなす声のほとんどがやっかみだった。
もちろん私だってイケメンが好きだし、むしろイケメンしか好きではないくらいだから、人並みに守岡優輝をいいなと思っていた。
でもそれはあくまで彼をテレビやスクリーンで見るタレントと認識した上での「いいな」であって、生身の守岡優輝は私とは別世界に生きる人だ。ついさっきまでは私の半径1メートル以内に存在するはずのない人……だったのに!
最終選考に残ったのは全部で7名。1番の人から順に守岡優輝との実技試験が始まった。この中からテレビドラマのヒロインが決まる。
「ほら、これ」