どうしてほしいの、この僕に
本当はほんの一瞬でいいから抱きしめられたい。だけど抱かれたら一瞬だけでは物足りなくなる。だからこそ今は阻止せねば。だって私は今日も仕事に行かねばならないのだ。
そんな私の葛藤を見越してか、優輝は甘い声で囁いて誘惑してくる。
「会社なんか休めばいい」
「無理……です」
きれいな顔が近づいてきて、数秒、私の唇をふさいだ。
「わかった。今日は我慢する」
優輝は私の腕を解放し、廊下を歩いていった。その背中を見送りながら、なぜか少しがっかりしている私。
『今日は我慢する』ということは、我慢しない日もあるわけ? そうなったら私はどうなってしまうのだろう。
黒っぽい細身のジーンズにミントグリーンのTシャツを着た優輝が戻ってきて、朝食の席につく。
まだパジャマ姿の私は、今さらだけど寝起きのままだと気がついた。家族以外にこんな姿を晒しても案外平気なものだな、とたまごやきをつつきながら思う。ついでに言えば、相手は世の女性を虜にしているイケメン俳優なんだけど。
あらためて向かい側に座る優輝を見た。
さすがに男子なだけあって、がっつくというほどではないけど、私よりはひと口の量が多い。その食べっぷりに見とれながら、彼は私のこの姿をどう思っているのだろうと考える。だらしない女だと思われていないかな。これからは朝起きたらすぐ着替えたほうがいいかも。あーでも、パジャマって楽なんだよね。
「ぼーっとして、どうした?」
私の視線に気がついた優輝がきれいな眉を少し寄せてこちらを見た。
「あ、いや、外は寒いのにTシャツだな、と思って」
「ああ。俺、昔から冬でも薄着なんだ」
「私の故郷は北のほうだけど、寒冷地仕様だから家の中は温かくて、そういう人が意外と多かったかも。みんな冬に暖房のそばでアイスクリームを食べるんです」
優輝はクスッと笑って牛乳を飲む。彼は牛乳が好物で、冷蔵庫に牛乳パックをいつも常備していた。背が高いのは毎日牛乳を飲んでいたからなのかもしれない。
「未莉も食べた?」
「まぁ、たまに」
「俺は地元のコンビニに売っている100円のソフトクリームが好きで、季節に関係なく食ってたな」
——地元のコンビニエンスストアに売っている100円のソフトクリーム。
そんな私の葛藤を見越してか、優輝は甘い声で囁いて誘惑してくる。
「会社なんか休めばいい」
「無理……です」
きれいな顔が近づいてきて、数秒、私の唇をふさいだ。
「わかった。今日は我慢する」
優輝は私の腕を解放し、廊下を歩いていった。その背中を見送りながら、なぜか少しがっかりしている私。
『今日は我慢する』ということは、我慢しない日もあるわけ? そうなったら私はどうなってしまうのだろう。
黒っぽい細身のジーンズにミントグリーンのTシャツを着た優輝が戻ってきて、朝食の席につく。
まだパジャマ姿の私は、今さらだけど寝起きのままだと気がついた。家族以外にこんな姿を晒しても案外平気なものだな、とたまごやきをつつきながら思う。ついでに言えば、相手は世の女性を虜にしているイケメン俳優なんだけど。
あらためて向かい側に座る優輝を見た。
さすがに男子なだけあって、がっつくというほどではないけど、私よりはひと口の量が多い。その食べっぷりに見とれながら、彼は私のこの姿をどう思っているのだろうと考える。だらしない女だと思われていないかな。これからは朝起きたらすぐ着替えたほうがいいかも。あーでも、パジャマって楽なんだよね。
「ぼーっとして、どうした?」
私の視線に気がついた優輝がきれいな眉を少し寄せてこちらを見た。
「あ、いや、外は寒いのにTシャツだな、と思って」
「ああ。俺、昔から冬でも薄着なんだ」
「私の故郷は北のほうだけど、寒冷地仕様だから家の中は温かくて、そういう人が意外と多かったかも。みんな冬に暖房のそばでアイスクリームを食べるんです」
優輝はクスッと笑って牛乳を飲む。彼は牛乳が好物で、冷蔵庫に牛乳パックをいつも常備していた。背が高いのは毎日牛乳を飲んでいたからなのかもしれない。
「未莉も食べた?」
「まぁ、たまに」
「俺は地元のコンビニに売っている100円のソフトクリームが好きで、季節に関係なく食ってたな」
——地元のコンビニエンスストアに売っている100円のソフトクリーム。