魔女の瞳Ⅲ
武士の地縛霊如きが、何か問題あるのだろうか。

「危険なのはそちらではない。武士の地縛霊が守るものの方だ」

「守るもの?」

オウム返しに私は言った。

「ああ…教会の調査でわかった事なのだが…御影城には桃香姫という城主の一人娘がいたらしくてな…桃香姫は城の抱える武士の一人、周防五郎之介時貞と恋仲だったらしい…しかし御影城は大国の侵略を受け一夜にして滅亡…桃香姫を守りきれないまま、時貞は共にこの世を去り、その無念で地縛霊となった」

「よくある話ね」

クリスの話を聞きながら、紅茶を一口飲む私。

「問題はここからだ」

クリスは指先で眼鏡を押し上げた。

「時貞は確かに強力な地縛霊だが…それ以上に危険なのはむしろ桃香姫の方なのだ」

「は?」

非業の死を遂げた、姫君の方が?

「…四門メグ、最近この御影市に、どれだけの魔物が出没したと思う?」

「……」

クリスが口にしたのは、私が疑問に思っていたのと同じ事だった。

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