魔女の瞳Ⅲ
ジルコー。

ネイティブアメリカンの言葉で『穏やか』という意味の名を持つ人狼(ワーウルフ)。

平たく言えば狼男だ。

桜花の住んでいる近辺で起きた猟奇殺人事件を調査中に、ひょんな事から桜花と戦闘になり、紆余曲折を経て彼女のパートナーとなったらしい。

「面倒をかけるわ、ジルコー。四門メグよ」


右手を差し出す私。

「……」

ジルコーは、伸び放題のボサボサの髪を無造作に掻き毟りながら、その手を興味なさげに見た。

そして。

「全く。お嬢ちゃんといいお前といい…デッドゲイトの血筋にゃ変わった魔女が多いぜ」

半ば呆れ顔で私と握手を交わす。

…まぁ、彼の言い分も理解はできる。

本来人間と魔物は相容れぬ存在だ。

魔物は人間を食料とし、人間は魔物を忌み嫌い、排除しようとする。

そんな相容れぬ人間を守る為に、これから私は体を張って戦おうというのだ。

ジルコーが呆れるのも無理はない。

「ちょっとジルコー、メグさんに失礼です」

桜花が彼を軽くたしなめるが。

「いいのよ」

私はクスッと笑った。

「私も同感だから」


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