魔女の瞳Ⅲ
第五章
かつてこの山で、御影城主率いる小国と、大国の戦があったのだという。
圧倒的な兵力差で迫る大国に御影の軍は為す術もなく。
城には火矢が放たれ、城は勿論、山までもが炎に舐め尽くされ、真紅に染まったのだという。
たった一夜にして滅亡してしまった、御影城とその一族。
桃香姫の心中は察する。
死に追い詰められる恐怖、愛する男と引き裂かれる悲哀。
それらの感情がない交ぜになり、やがては憎悪へと変わっていったのだろう。
悔やんでも悔やみきれない非業の死。
悪霊と化してしまう気持ちもわからなくもない。
わからなくもないが。
「すごい気配ね…」
私は山道を歩きながら呟いた。
…かつては剥き出しの山道だったのかもしれないが、今では人の手が加えられ、多少歩きやすくなっている。
しかしこの山道に立ち込めるのは、明らかに何らかの『気配』だった。
それは人でも、獣でもない。
人外の者が持つ特有の気配。
東洋風に言うなら『妖気』の類だった。
圧倒的な兵力差で迫る大国に御影の軍は為す術もなく。
城には火矢が放たれ、城は勿論、山までもが炎に舐め尽くされ、真紅に染まったのだという。
たった一夜にして滅亡してしまった、御影城とその一族。
桃香姫の心中は察する。
死に追い詰められる恐怖、愛する男と引き裂かれる悲哀。
それらの感情がない交ぜになり、やがては憎悪へと変わっていったのだろう。
悔やんでも悔やみきれない非業の死。
悪霊と化してしまう気持ちもわからなくもない。
わからなくもないが。
「すごい気配ね…」
私は山道を歩きながら呟いた。
…かつては剥き出しの山道だったのかもしれないが、今では人の手が加えられ、多少歩きやすくなっている。
しかしこの山道に立ち込めるのは、明らかに何らかの『気配』だった。
それは人でも、獣でもない。
人外の者が持つ特有の気配。
東洋風に言うなら『妖気』の類だった。